What’s M&A? 企業合併の基礎

企業再編の方法~合併を一から知ろう~

近年、M&Aが中小企業の間でも盛んに話題にされるようになりました。
企業経営に求められるスピードが日に日に高まっている昨今、どの会社であっても生き残りをかけてM&Aの当事者になることは不思議ではない時代といえます。
 
M&Aとは、「Mergers(合併) and Acquisitions(買収)」の略称です。
「合併」と「買収」のどちらも「2つ以上の会社が1つになる」といった漠然としたイメージで同じように使われがちですが、厳密には違うものです。
 
ここでは、買収と比較しながら、主に合併に関する法律上の取扱いや会計・税務のポイントについて解説します。

 

◆合併と買収の共通点と相違点

□合併と買収の共通点

まず共通点から挙げると、合併、買収いずれも、新規分野への進出、既存分野や周辺分野の強化を迅速にできるメリットがあります。
 
事業の立ち上げは、土地、建物、機械設備、製品・商品といった「モノ」を準備するだけでは足りません。
人材の採用・教育といった「ヒト」、資金調達などの「カネ」、そしてビジネスとして成立させる情報・ノウハウの獲得までコストがかかります。
これらの膨大なコストと比較すると、既に事業を行っている企業の経営資源を合併や買収によって取り入れる方が手っ取り早くて経済的です。
 
経営統合することによって取引先や顧客に対する交渉力や影響力が強まるため、売上を伸ばすことができたり、また、取引規模が大きくなることで費用を圧縮できたり、といった経済効果が期待できます。
それだけでなく、管理部門などのコストを共有できたり、より効率的に経営資源を配分できたり、といった面からも収益に貢献するとされています。

□合併と買収の相違点

合併では、複数の会社が契約により1つの会社に合体し、1社を残して他の会社は消滅します。
対して、買収では、買手となる会社が対象会社の議決権株式の過半数を買い取ることで会社そのものの支配権を獲得することもあれば、欲しい事業部門だけを買って自社に取り入れることもあります。
つまり、合併では買われる会社が消滅するのに対して、買収では買われる会社は存続するのが一般的です(ただし、買収された後に合併されて消滅することもあります)。
 
また、「合併」は正式な法律用語で、会計・税務・法務上の取り扱いがきちんと決まっていますが、法律上、「買収」という言葉はなく、実務上の使われ方も多岐に渡るため、それだけで手続きまでは推測できません。
買収する対象が会社そのものなのか、事業なのか、その対価は現金なのか、自社の株式なのかによって取り扱いが変わってきます。

 

◆合併の種類~吸収合併と新設合併~

合併は、複数の会社が契約により1つの法人格に統合する取引ですが、その形態には「吸収合併」と「新設合併」があります。
 
【吸収合併と新設合併のスキーム図】
合併【吸収合併と新設合併のスキーム図】

 
「吸収合併」では、合併する会社のうち存続する1社が他の会社を吸収して、他の会社は解散して消滅し、その権利義務(従業員や資産・借入金など)の全てを、存続する会社が承継します。
 
「新設合併」では、すべての合併会社が解散すると同時に、受け皿としての新しい会社(新設会社)を設立し、解散する会社の権利義務を、新設会社が包括的に引き継ぎます。
新設合併は、すべての会社を一度解散させるため、許認可を取り直す必要があり、上場会社同士の合併であっても改めて公開申請が必要になるなど、吸収合併と比較すると手続が煩雑で、登録免許税などのコストも大きくなります。
 
そのため、実務的に採用されるケースはほとんどなく、「合併」といわれたら、基本的には吸収合併を想像していただいて問題ありません。

 

◆様々な業界で合併が進んでいる意味

「失われた20年」の間、日本では大企業が淘汰されず、一部では「生き残りすぎた」という意見もあります。
 
その間にも、海外では大企業同士での合併が進み、巨大な企業が誕生してきました。
石油会社、製薬会社、飲料メーカーなどは、日本の大手が束になっても肩を並べることができないほど企業の規模で差がついているのが実情です。
 
企業の合併や経営統合の目的は、このようなグローバルに世界の巨大企業と戦うため、といった「攻め」ばかりではなく、経営環境が厳しくなった業界で生き残るため、という「守り」のケースもあります。
 
国内市場が飽和した百貨店業界や旅館・ホテル業界、食品スーパーやコンビニなどの小売業界、ECの普及などで存在意義が問われている卸売事業者、政策に揺れる金融機関などが代表的です。

 
 
以下、吸収合併にかかわる法務・会計・税務の実務上の取扱いについてご説明します。

 

◆吸収合併の法務

吸収合併の手続きの概略は次のようになります。
 
【合併手続きのフローチャート】
合併【合併手続きのフローチャート】

□合併契約締結

合併契約では、消滅会社の株主に交付する対価や効力発生日など、法律で定められた事項を漏れなく決定しなければなりません。
合併契約には法定の必要事項があり、この必要事項を欠くと合併の無効原因になります。

□合併に関する書類の事前備置

存続会社および消滅会社は、株主や債権者が合併の適否を判断できるよう、合併契約や当事会社の計算書類など一定の書類を本店に備え置かなければなりません。
備え置く期間は合併の効力発生日後6ヵ月を経過するまでです。

□債権者保護手続

存続会社および消滅会社は、債権者に対して合併に異議があれば一定期間内に申し出る旨を官報(一定の場合は日刊新聞紙、電子公告)で公告しなければなりません。
異議申出の期間は1ヵ月以上必要です。

□公正取引委員会への届出

合併当事会社の中に、国内売上高合計額が200億円を超える会社と50億円を超える会社の双方が含まれる場合は、事前に公正取引委員会へ届け出る必要があります。
この届出受理の日から原則30日を経過するまでは合併をすることができません。

□株主の株式買取請求

存続会社および消滅会社は、合併の効力発生日の20日前までに株主に対して合併する旨の通知(一定の場合は公告)をしなければなりません。

□株主総会による合併契約の承認

合併契約は、合併の効力発生日の前日までに存続会社および消滅会社の株主総会で特別決議による承認を受ける必要があります。
(ただし、簡易合併、略式合併の場合は、原則として株主総会による決議を省略できます。)

□登記・財産等の名義変更手続

存続会社の代表者は、合併の効力発生日から2週間以内に、存続会社の変更登記と消滅会社の解散登記をする必要があります。
また、消滅会社の権利義務はすべて存続会社に移転するため、預金、土地および建物など、消滅会社の名義になっている財産等については存続会社への名義変更が必要です。

□合併に関する書類の事後備置

存続会社は消滅会社より承継した権利義務や合併手続の経過等を記載した書類を作成し、効力発生日から6ヵ月間本店に備え置かなければなりません。

 
⇒合併の法務(意義、法的効果、制限、承認)
 
⇒合併の法務(吸収合併の手続き)
 
⇒合併の法務(吸収合併の登記とコスト)

 

◆吸収合併の会計

合併などの組織再編の会計処理を取り扱う企業結合会計基準では、企業結合の経済的実質として、会計上の分類(「取得」、「共同支配企業の形成」、「共通支配下の取引」)ごとに、適用すべき会計処理を使い分けることとしています。
そのため、企業結合の会計処理を行うにあたって、まずは下記フローチャートに従って会計上の分類のいずれに該当するのかを検討する必要があります。
 
【企業結合の会計上の分類と結合企業に適用される会計処理】
合併【企業結合の会計上の分類と結合企業に適用される会計処理】
 
企業結合が「取得」と判定された場合には、パーチェス法が適用されます。
パーチェス法とは、被取得企業から受け入れる資産および負債の取得原価を、原則として、対価として交付する現金及び株式等の時価とする方法です。
取得原価と取得原価の配分額との差額がのれんとなり、のれんは20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、規則的に償却します。
差額がマイナスのときは「負ののれん」となり、発生時に一括で収益に計上します。

□設例

【前提】
・会計上「取得」と判定され(A社が取得企業、B社が被取得企業)、パーチェス法により処理される。
・取得原価は交付されたA社株式の時価8,500である。
・B社の土地(時価1,000)以外、資産・負債に簿価と時価の差異はない。
・増加資本金は2,000である。
 
【B社の合併最後事業年度終了時における貸借対照表(会計)】
合併【B社の合併最後事業年度終了時における貸借対照】
 
会計上、「取得」に該当するものとして、資産・負債について時価で受け入れます。
株主資本については、合併契約上資本金の増加額とされた金額(2,000)以外はその他資本剰余金として処理します。
 
【会計上の仕訳(合併存続法人)】
合併【会計上の仕訳(合併存続法人)】

 
⇒合併の会計(パーチェス法)

 
⇒合併の会計(共通支配下の取引)

 

◆吸収合併の税務

合併による資産等の移転は原則として合併消滅法人が時価により譲渡したものとして取り扱います(「非適格合併」)。
ただし、対象となる合併が一定の要件を満たす(「適格合併」に該当する)場合には、資産等の移転は帳簿価額による引継ぎが行われたものとして譲渡損益の計上が繰り延べられることになります。
 
【適格合併判定の流れ(概要)】
合併【適格合併判定の流れ(概要)】

□株主にかかる税金

「非適格合併」が行われた場合、消滅法人の株主は、いったん時価によって株式を譲渡した上で、合併新株等の交付を受けたものとされ、みなし配当および譲渡損益が生じ、課税されることになります。
「適格合併」であれば、みなし配当課税は生じません。
 
・みなし配当
みなし配当とは、組織再編(合併もこの1つ)などで資産(合併の場合は株式や金銭)の交付を受けた場合、その資産の時価の合計額が、資産を交付する法人の資本金等の額を超えるとき、その超える部分の金額を配当の額とみなす制度です。
みなし配当を認識された株主が個人であれば、「配当所得」として最高税率55.945%(所得税45%、復興特別所得税0.945%、住民税10%、)の総合課税の対象となります。
 
・株式譲渡損益課税
合併消滅法人の株主が合併に際して合併交付金等を受け取る場合、株主において株式譲渡損益が発生します。
合併の対価が株式のみの交付であれば、非適格合併であっても、譲渡損益は発生しません。

□設例

・合併により新株700(時価)および合併交付金300を受け取る。
・合併消滅法人の旧株に対応する資本金等の額は600とする。
・旧株の簿価は300とする。
 
【合併におけるみなし配当と株式譲渡利益のイメージ】
合併【合併におけるみなし配当と株式譲渡利益のイメージ】

 
⇒合併の税務(概要)

 
⇒合併の税務(非適格合併)

 
⇒合併の税務(適格合併)

 

◆まとめ

今後もM&Aによる企業同士の経営統合、そして合併は加速して行くはずです。
それは企業が、肥大化していくグローバル市場で打ち勝つためであり、縮小して行く国内市場の中で生き残るためでもあります。
 
合併の当事者となったとき、あるいは、なりそうな事態に立たされたとき、法務、会計、税務の取り扱いを含めた全体として経営に与える影響を把握しておくべきでしょう。
合併の経営判断と実行には、深い専門知識が必要となるため、検討の段階から専門家に相談することをおすすめします。

 
⇒買収とは?企業買収の意味
 
⇒中小企業のM&A戦略
 
⇒M&Aで成功する秘訣とは!M&Aの基礎知識
 
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