M&Aの基礎知識 7. M&A(買収)ファイナンスの基礎知識

M&A(買収)ファイナンスの手法は、大きく分類すると、シニア・ローン、メザニン・ファイナンス(優先株式、劣後ローン等)の2つがあります。金融機関や投資家の資金を活用して少ない自己資金で対象会社を買収すれば、投資効率を高めることができます。 最も一般的な買収ファイナンスは、株式の買取り資金をシニア・ローンと買手の拠出する普通株出資によって調達する方法です。シニア・ローンは、資金調達の構造上で最も期間が短く、返済が最優先され、かつ、多くの場合は有担保のファイナンスになります。シニア・ローンの貸手が提供できる金額の上限では、想定するレバレッジ比率の実現には足りない大規模な案件である場合、シニア・ローンによる資金調達に加えて、メザニン・ファイナンスを利用します。メザニン・ファイナンスとは、デット(有利子負債)とエクイティ(自己資本)の中間的位置づけにあたるプロダクツを指し、デットに該当するものでは劣後ローン、エクイティにあたるものでは優先株式が代表的です。 また、資金調達主体ごとに分類すると、その信用力を引当てとする取引(コーポレート・ファイナンス)と、買収目的で設立されたSPC(Special Purpose Company:特別目的会社)を資金調達主体とすることで、買手の信用力ではなくSPCと買収対象となる会社の信用力のみを引当てとする取引(ノンリコース・ファイナンス)が挙げられます。 コーポレート・ファイナンスは事業会社である買手によって行われることが多く、その買手自身の与信に基づいて資金調達を行うことができるので、M&Aの局面であっても、考慮するべき点は通常の設備投資と大きく変わりません。ノンリコース・ファイナンスが用いられるのは、経営陣によるMBOや投資ファンドによるM&Aのケースです。 この場合、LBO(Leveraged Buy-Out)による資金調達が行われることが多く、その可否は主として買収対象となる会社の財産状態や弁済能力により判断されます。つまり、対象会社の信用力と収益獲得能力を担保に資金調達を行うことになるのです。

7-2. シニア・ローンとメザニン・ファイナンスの活用

最もリスクの低いシニア・ローン

最も一般的な買収ファイナンスの方法としては、株式の買取り資金をシニア・ローンと買手の拠出する普通株出資によって調達する。
シニア・ローンは、資金調達の構造上で最も期間が短く、返済が最優先され、かつ、多くの場合は有担保のファイナンスである。
また、保証やコベナンツなどが融資条件に入れられることで、相対的に最もリスクの低い買収ファイナンスのプロダクツといえる。
買収資金の調達額のなかで最も大きく、50%を超えることが通常で、高い場合には80%程度の比率を占めることもある。
シニア・ローンの調達は、以下の各プロセスを経て行われることが一般的である。

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(シニア・ローンによる買収ファイナンスの手続き①)インディケーション・レターの取得

スポンサーと金融機関との間で守秘義務契約を締結した上で、金融機関に対する買収取引の説明や対象会社に関する資料の開示等が行われ、金融機関における検討が開始される。
両社の間で融資金額や金利等の主要条件の検証、交渉を行い、この内容をまとめて作成された文書をインディケーション・レターという。
これを金融機関がスポンサーに差し入れることにより初期的な融資条件の提示が行われる。

(シニア・ローンによる買収ファイナンスの手続き②)コミットメント・レターの取得、タームシートの合意

コミットメント・レターとは、ローン契約の締結前において、金融機関からSPCまたは買手に対して、融資の意思を表明するものとして提出される書面である。
これには、金融機関による融資の意思表明と確約のほか、ローン契約の締結・融資実行の条件などが記載される。
金融機関と買手との間の主要な融資条件の交渉は、タームシートの作成を通じて行われる。
このタームシートを通じて、融資金額、金利、前提条件、期限前弁済、表明保証などの融資の主要条件について合意される。

(シニア・ローンによる買収ファイナンスの手続き③)買収契約・ローン契約の締結

タームシートで合意された内容を基に、ローン契約を締結する。
買収取引に関する契約内容についても、金融機関と共有しながら検討することが必要である。
ローン契約に規定される条項は、資金使途、前提条件、弁済に関する事項、表明保証、誓約事項、期限の利益喪失事由、債権譲渡に関する事項、権利調整に関する事項などが挙げられる。

(シニア・ローンによる買収ファイナンスの手続き④)融資の実行と買収

締結済みのローン契約に基づいて買収資金の融資が行われ、買収資金の決済がされる。融資実行の前提として、買手が保有しているSPCの株式やSPCが有する預金その他の金銭債権等についての担保設定が必要である。

(シニア・ローンによる買収ファイナンスの手続き⑤)担保・保証の差入れ

融資実行後は、SPCが取得した対象会社の株式についての担保設定、対象会社からの保証の差入れ、その保有資産の担保提供が求められる。
回収の局面にあっては、貸付人は担保権の実行により対象会社の事業価値を毀損させることがないように、回収の最大化を実現できる方針を検討しなければならない。

(シニア・ローンによる買収ファイナンスの手続き⑥)債権管理、ローンの返済

金融機関は、ローン契約上合意された財務諸表等の提出義務・報告義務や財務制限条項を含む誓約事項等を通じて、借入人や対象会社のモニタリングを行っていく。
借入人は、遅くとも最終の元本返済期限において、借入元本の全額を返済しなければならない。
元本返済の原資は、株式や対象会社事業の全部または一部の売却処分による売却代わり金か、リファイナンスによることが多い。

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シニア・ローンによる資金調達だけでは足りない場合

シニア・ローンの貸手が提供できる金額の上限では、想定するレバレッジ比率の実現には足りない大規模な案件である場合、シニア・ローンによる資金調達に加えて、メザニン・ファイナンスを利用する。メザニン・ファイナンスとは、デット(有利子負債)とエクイティ(自己資本)の中間的位置づけにあたるプロダクツを指し、デットに該当するものでは劣後ローン、エクイティにあたるものでは優先株式が代表的なものである。
シニア・ローンとメザニン・ファイナンスの双方を用いたノンリコース型の買収ファイナンスが、最も多く法的論点を含んでいる。

メザニン・ファイナンスを利用した買収ファイナンス

メザニン・ファイナンスは、シニア・ローンと普通株式による出資の間の中間的なリスクとリターンを有する資金供与手法である。
「メザニン(Mezzanine)」という言葉は、「中2階」という意味であり、上層階にあたるシニア・ローンには劣後し、下層階である普通株式には優先するすべての投資商品がこれにあたる。
リスク分担やリターンの取り方の仕組みが様々なパターン考えられ、資金供与を行うプレイヤーも銀行、投資銀行、ファンド、ノンバンクなど様々である点に特徴がある。

メザニン・ファイナンスの借手は、案件ごとに全体のリスクを正しく評価し、それに見合ったリターン(金利、配当、新株予約権など)を設計することが重要になってくる。
また、シニア・ローンとの間の権利義務、普通株式との間の権利義務を規定する必要があり、債権者間協定や株主間協定も必要となる。
多くの場合、シニア・ローンと普通株式による資金だけでは買収資金を調達できない案件や、買収対象事業の成長予想やリスク評価の難しい案件などで機能する。
具体的な資金供与の手段としては、劣後ローン、優先株式などが挙げられる。

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【シニア・ローンとメザニン・ファイナンスを併用した買収ファイナンス】

M&Aファイナンス 図表2

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