M&Aの基礎知識 9. M&A実行後にかかる税金

株式譲渡(会社の売却)と事業譲渡(事業の売却)とでは課税関係、対価を受取る主体などが異なるため、どちらを選択するかによってM&A後のオーナー手残り額は変わってきます。また、法人の課税関係については、適格組織再編に該当するかどうかの確認は必須です。 通常は、 中堅中小企業のM&Aにおいては利用されることが多い「株式譲渡」と「事業譲渡」、そして「組織再編」で比較検討することになります。 「株式譲渡」では、M&Aの売手企業の株主が、買手に株式を売却し、売却代金を手にします。つまり、課税される対象は売却代金を受け取った売手企業の株主です。この株主が個人であれば、株式を売却したことで受け取った利益(譲渡所得)に対し所得税が課され、売却した翌年の確定申告で申告・納税しなければなりません。一方、「事業譲渡」では、M&Aの売手企業が買手企業に事業に係る資産を売却し、売却代金は、売手企業が受け取ります。そのため、これによる利益は法人税の課税対象となり、株主に税負担はありません。 「組織再編」は、手法にもよりますが、多くの場合、売手が受け取る対価は現金ではなく、買手企業の株式になります。また、その組織再編行為が「税制適格要件」に該当するかどうかによって課税関係が変わり、税制適格要件を満たさず「非適格組織再編」となる場合、株主、譲渡対象会社は、それぞれに課税が生じることもありますM&Aによる対価は、株式の譲渡に対する代金としてではなく、役員退職金として受け取ることで課税上有利になることもありますが、課税上の取扱いには十分に注意する必要があります。また、M&Aの実行後、手元資金をどのように運用すれば相続対策として合理的なのか、というところまで考慮することも重要です。

9-3. 事業譲渡によるM&Aと税金(全部譲渡)

事業譲渡では、売手の会社が買手の会社に事業を売却する。
すべての事業を売却するケースと一部の事業を売却するケースがあるが、ここでは、すべての事業を売却するケースを説明する。

①事業譲渡によるM&Aと法人税

事業譲渡による売却代金は、売手企業が受け取り、一定の計算に基づいて利益が出れば、売手企業に法人税が課税される。
売手企業の株主は課税されない。
事業譲渡では、譲り渡す事業資産と負債の差額を超えた売却金額が売却益となって課税対象となる。
法人の利益に係る税金には、法人税のほか、地方法人税、法人住民税、事業税などがあり、これらをすべて合わせた理論上の税率を「実効税率」という。
近年では引き下げの方向にあるものの、約30%と概算される。

②事業譲渡によるM&Aと消費税

事業譲渡では、株式譲渡と違って、売却した会社に対して消費税も課税される。
売却代金から土地など消費税対象外の資産を差し引いた額に、現在であれば8%の税率を掛けた金額が消費税の納税額の概算である。
売却代金が高額になると消費税率の負担も重くなる。
仮に10億円の売却代金で消費税の非課税財産が1億円だとすると、納税額は7,200万円であり、消費税率が10%に引き上げられれば9,000万円にもなる。
特にM&Aの途中で株式譲渡から事業譲渡に手法を変更した場合などには、消費税負担を想定していないことが多く、資金計画が狂ってしまう可能性がある。

③事業譲渡によるM&Aにおける不確実性と対策

在庫などの棚卸資産は常に変動しているため、おおよその売却代金は事前に決めることができても、最終的には、事業譲渡の日に棚卸を実施しなければ、細かな部分の売却代金が確定できない。
そして、それによって、法人税も消費税も変わってくる。
事業譲渡で法人税の負担が高額になりそうな場合は、できるだけ決算の期首にM&Aを実行することを推奨する。
決算までに時間があるので、必要な対策を講じやすくなる。

④事業譲渡によるM&Aの留意点

事業譲渡によって事業を引き継ぐ会社が変更になるので、契約が必要なものはすべて、その再締結が必要であり、事業所の賃貸契約、光熱費や通信費などの契約の名義変更も求められる。
また、不動産の名義変更にあたっては、不動産取得税、登録免許税などのコストがかかる。
従業員との雇用契約も結び直す必要があるため、その際、従業員が他の会社に転職してしまうリスクも生じる。
主要な従業員が退職してしまうと事業の継続自体が危うくなってしまうケースもあるため、最近では、事業譲渡を行う前に主だった従業員と雇用継続の覚書などを交わすこともある。

M&A税金4

 
⇒事業譲渡とは?その内容についてご紹介
 
⇒事業譲渡によるM&Aの基礎知識
 
⇒事業譲渡によるM&Aと税金(一部譲渡)
 


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