M&A事業承継 用語集 M&Aの手続き・法令

M&Aの手続きや契約について、実務の中で使われる用語をまとめました。

M&A (えむあんどえー / merger and acquisition)

M&Aとは、Merger(合併) and acquisition(買収)の略であり、企業またはその事業の全部または一部の移転を伴う取引をいう。一般的には「会社もしくは経営権の取得」を意味し、合併株式取得事業譲渡といった手法がある。これを狭義のM&Aとした場合、広義のM&Aとして、業務提携、資本提携等をすることによって、シナジー効果を期待した「経営面での協力関係」を含めるという考え方もある。
 
日本におけるM&Aの件数は、2006年までにかけてIn-in案件を中心に増加しつづけたが、2008年のリーマンショックをきっかけにして大きく減少した。その後、2012年に増加に転じ、現在に至るまで増加傾向にある。
2010年の円高以来、In-out案件が増加しており、リーマンショック前を上回る高い水準を維持している。

 
⇒企業再編の方法~合併を一から知ろう~
 
⇒買収とは?企業買収の意味

 
◆M&Aの種類
M&Aのうち、「合併」は2つ以上の会社が1つの会社に統合され、1つの法律上の人格(法人格)として権利・義務の主体になることである。
合併でも、M&Aの後に存続する企業があるかないかで「吸収合併」と「新設合併」に分けることができる。

 
買収と一言にいっても、その方法は1つではなく、買収の方法は、大きく「株式の取得」と「事業の取得」に分けられる。
 
「株式の取得」は、会社そのものを取得することと、ほぼ同じ意味である。
特別な手続きを踏まない限りは、法律上、そっくりそのまま会社の持ち主が代わる。
むしろ、持ち主が代わるだけで、会社の名前も、事業内容も、従業員も、他は何も変わらず、権利も、義務も、許認可もそのままである。
この特徴が、株式の取得によるM&Aの最大のメリットでありデメリットでもある。
これが意味するところは、「事業の取得」との比較だと分かりやすい。
 
「事業の取得」は会社ではなく、会社の中身である事業だけを取得することである。
会社を卵で例えると、会社の登記事項など、会社を会社として法的に証明しているものを卵の殻とすれば、事業は黄身のようなものだ。
株式の取得は、卵ごと全部を取得することですが、事業の取得は卵の中の黄身だけを取り出して取得することになる。
 
ただし、実際のところ「事業」は卵の黄身ほど形がくっきり見えるものではない。
事業を形づくっているものは土地、建物、製品(商品)、システムなどといった有形の財産だけではなく、人材、特許権等の知的財産権、ブランド、顧客リストや契約などの無形の財産も含める。
事業を取得するときは、これらの財産にかかわる権利について、ひとつひとつ取得する手続きを行うことになるため、一般的には煩雑になる。
そのため、M&Aは「株式の取得」によって実行されることがほとんどである。
 
ただ、綺麗な殻に包まれていた卵だったとしても、果たして、中まで新鮮である確証はない。
事業だけを取得するのであれば、必要な部分だけを選り分けることができる。
つまり、M&Aの買手の立場からいうと、株式の取得は、会社の中の事業が安全であることに確信が持てるときに行い、事業の取得は、怪しい部分があるとき、問題ない部分だけを選定して取得したいときに行うもの、といえる。
 
株式を取得する方法は「株式譲渡」、「株式交換」、「第三者割当増資」といわれるものがあり、事業を取得する方法は「事業譲渡」、「会社分割」がある。
実務上、使われることが多いのは「株式譲渡」と「事業譲渡」で、実感としては9割を超える。
「株式交換」、「会社分割」は、会計・税務上の取扱いが難しく、中堅・中小企業のM&Aで使われることは少ない。
また、「第三者割当増資」については、この手法だけで株式の過半数を取得しようとすると、株式譲渡に比べると多額のコストがかかる。
支配権を獲得することを目的とした手段としては一般的ではない。

 
「提携」には、過半数未満の株式を取得したり、互いに持ち合ったりする「資本提携」と、資本関係は持たずに、お互いの事業展開をより効率的に、強力に推進するために行われる「業務提携」に分けられる。
「資本提携」と「業務提携」をまとめて「資本業務提携」として使われることが多く、株式を取得する取引と同時に、業務提携の内容等も定める資本業務提携契約などが締結される。
 
⇒資本業務提携のメリットや留意点、その目的とは

 
◆M&Aのメリット
M&Aで会社を取得する側(買手企業)のメリットは、他社から経営資源(ヒト、モノ、カネ、情報など)を取り入れることによって、中核にしている事業を強化したり、弱みを補完したり、迅速に新規事業へ進出することができる点にある。
既に事業としてビジネスモデルができ上がっている会社を買収するため、新規事業が軌道に乗るまでの初期投資が不要になる。
また、売上規模の拡大、スケールメリットによるコスト削減、技術・ノウハウ・人材の獲得などのメリットも代表的なものとして挙げ
 
一方、M&Aにより会社を取得される側(売手企業)にもメリットはある。
業績不振の企業であれば、スポンサーが見つかり、追加で出資を受けることができれば、「会社が潰れるかもしれない」という従業員や取引先の不安はやわらぐ。
その上、両社の相乗効果(シナジー)がうまく機能すれば、V字回復を見込むこともできる。
ただし、このような事業再生型のM&Aは一部に過ぎない。
 
業績が堅調であっても、特に中小企業では、会社を次の世代に引き継ぐ「後継者問題」を解決するための事業承継型のM&Aが行われるケースも多くなっている。
経営を引き継ぐことができれば、従業員の雇用を守ることができ、独自の技術やノウハウを伝承することで取引先にも迷惑をかけない。
買手企業から支援を受けることができれば、人材の確保、新しい販路の開拓、新規投資などによって、会社をさらに強くできる可能性もある。
 
会社の連帯債務者となっている社長にとっては、個人保証から解放されるというのが心理的には非常に大きなメリットである。
加えて、株式を売却した対価と、会社へ貸し付けていたお金の返済、そして退職金で隠居生活を送ることができる。

 
◆M&Aの流れ

 
(①事前準備)
以下のチェックポイントを確認しておく。
□M&Aの選択は妥当なのか
□事前に調整するべき利害関係者と協力者の目星はつけたか
□議決権を確保したか

 
(②アドバイザー選定)
M&Aで売手と買手の間に入るアドバイザーのことを一般的には「フィナンシャル・アドバイザー」という。
中堅・中小企業のM&Aでは、M&Aを専門としているコンサルティング会社や仲介会社がその役割を担う。
依頼先が決まったら、アドバイザリー契約あるいは仲介契約を結ぶ。

 
(③相手探し)
アドバイザーが決まったら、早速、買手候補へのアプローチを開始する。
アドバイザーの方で候補先のリストを作成することはできますが、社長に買手の条件や意中の候補があれば、この時点から共有する必要がある。
その後、条件に合いそうな候補先を数社に絞込む。
そして、ノンネームシートと呼ばれる匿名の企業概要を作成し、買手候補の会社に提示して打診する。

 
(④秘密保持契約)
買収を希望する会社から、さらに詳細な情報の開示を求められれば、秘密保持契約を結ぶ。
秘密保持契約はM&Aを行おうとする当事者が、相互に情報開示を行う前提として最初に締結する契約である。

 
(⑤IM提示)
秘密保持契約が締結されると、IM(Information Memorandum:インフォメーション・メモランダム)と呼ばれる企業の詳細情報を買手企業に提示します。
IMは「企業概要書」とも呼ばれ、会社の名前はもちろん、詳細な事業内容、財務情報が記載されたものです。

 
(⑥トップ面談)
買手候補が具体的に買収を検討する段階になると、いよいよトップ同士の面談になる。
通常、2、3社程度の面談を行うが、売手企業と買手企業のトップ同士が顔を合わせて話ができるのは、基本的にはこのときだけと考えた方がいい。

 
(⑦基本合意契約)
基本合意書の作成は必須のものではなく、M&Aの基本的な条件が法的拘束力を有しない形で規定されるのが一般的である。
とはいえ、基本合意契約には、売主手と買手の共通認識を明確にしておき、認識の相違を防止するとともに、今後交渉が必要となるポイントを明確にする機能がある。
一般的には、買収の基本的な条件、誠実交渉義務、独占交渉権、守秘義務、スケジュールの概略などが規定される。

 
(⑧デューデリジェンス(買手による詳細調査))
基本合意をした後、買手企業は売手企業の実態を把握するために、デューデリジェンスを行う。
デューデリジェンスとは、財務(資産・負債の状況など)、法務(約款・契約関係など)、事業(生産・販売活動など)、労務(会社組織・従業員など)に関する調査する手続きのことである。

 
(⑨条件交渉)
デューデリジェンスの結果、交渉を断念させるような問題がなければ、経営者、役員、従業員の処遇や、最終契約までのスケジュール、その間に遵守すべき事項、守秘義務などに関する合意事項について固める。
その後、細かい条件を詰めていき、最終的な売却価格を決定することになる。

 
(⑩最終契約・クロージング(代金受け渡し))
最後の手続きで、譲渡の内容(株式譲渡・事業譲渡など)、売買価格を定めた最終契約書を取り交わし、買手側から譲渡代金を受け取る。
この最終段階で、売買条件、対価の支払い日などは、再度の確認が必要となる。
必ず確認しておきたいのは、「前提条件」、「売主の義務」、「表明保証」、「補償条項」の4点である。

 
(⑪PMI(M&A後の統合作業))
PMI(Post Merger Integration)と呼ばれる統合作業こそが、M&Aの総仕上げである。
M&A成立後は、できれば買手企業から売手企業に数人常駐して、ビジネスの流れやスタッフの特徴などを把握し、ノウハウを共有していくべきである。
その後、各分野、部署で事務局や分科会、委員会などを設置し、売手企業・買手企業の現場のスタッフが定期的に意見交換して、営業、業務、法務、財務、システムなどのさまざまな面から具体的なすり合わせを進めていく。

 
M&Aの全容を把握するには、契約まわりの法務、スキームの検討には必須の会計・税務といった専門知識だけなく、組織の問題やITインフラをも含めた経営全般の理解が必要になる。
ともにM&Aを進めるアドバイザーには、多様な専門性を持ち合わせたプロフェッショナルに依頼するべきである。

 
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