M&Aによって、経営資源の再配分を実施。 信頼してくれる社員と東京進出を実現した事例

譲渡会社:ディライト株式会社

事業内容
結婚式場の運営および飲食業など
エリア
奈良県
売上規模
非開示

譲受会社:上場企業A社

事業内容
挙式・披露宴の企画・運営を行うブライダル事業
エリア
東京都
売上規模
非開示

当社の関わり方

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背景・売り手オーナー様の課題

奈良県に本社を置き、ブライダル事業でエリアナンバーワンのシェアを誇るディライトは、富山県でもブライダル式場を保有、運営していた。しかし、ローカル市場における競争の激化と市場規模の縮小が進んだため事業戦略を見直して、市場規模の大きい東京に進出し、ローカル市場は奈良に集中することを決断した。このため、十分利益の出ていた富山の式場を他社へ事業譲渡し、富山のスタッフを東京に振り向けることになった。

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M&Aの進め方、成約のポイント

山田ビジネスコンサルティングは売手オーナー様にヒアリングを行い希望する条件を把握する一方、譲渡先候補企業リスト(ロングリスト)を作成し、交渉のセッティングや支援、適切な判断に必要な情報の提供等を行っていった。今回のケースでは売手企業の絶対に譲れない条件であった事業譲渡のタイミングを満たせたことに加え、買手に転籍する従業員にとっても、安心できる買手企業に事業譲渡できたことが、成約のポイントとなった。

成果・効果

・戦略の変更に伴う事業ポートフォリオの入れ替え。
・人材のジャストタイミングでの異動により、順調な新規事業の立ち上げに成功。
M&Aに関わった社員、役員の成長。

Interview インタビュー

――ディライトとはどのような会社ですか。
出口 もともとは祖父が1950年に奈良で創業した、出口綿業という肌着の生産工場でした。その後、時代の変化に合わせて事業内容をどんどん変化させていった会社で、現在は会長に就任している父の代にライフスタイル提案型の輸入雑貨店を始め、いまはブライダルや写真スタジオ、飲食店を展開しています。
――出口社長は2013年に先代から事業承継されたそうですが、その経緯について教えてください。
出口 事業承継の2年前、富山にあった事務所からの帰路で父に「社長を交代して欲しい」と私から話をしました。私が学生のときに父が重い病気で倒れたことがあり、当時で年商6億円、従業員60名の会社を学生の自分がどうマネジメントすればいいのかと非常に不安になったことがあったので、父が元気なうちに私に事業を引き継いで、私の経営に問題があったら大所高所から指摘して欲しいとお願いしたんです。ところが父は「俺はいらないということか!」と無茶苦茶怒り出して、移動中の4時間、まったく口をきいてくれませんでした。しかし結果的にはこの大ゲンカがきっかけで、「やはり譲らなければいけない」と考えてくれたようです。
――ディライトは2015年、運営していた結婚式場「ラ・ブランシュ富山」を事業譲渡されました。その背景や狙いはどのようなものでしたか。
出口 それまで、私たちは地域戦略で「奈良県のブライダルマーケットの72%を獲得する」という目標を立ててやってきました。しかし、最も良いときで45%のシェアを獲得しましたが、最終的に72%には届かなかった。奈良県のマーケットに東京資本が参入したためです。競合の参入で今後、私たちのシェアは落ちていくでしょうし、結婚する若い人たちの減少で奈良のブライダル市場自体も縮小していくのは明らかです。そこで私たちは戦略を都市型に変更することに決めました。つまり、市場の大きい東京に出店して勝負しようと。そう決断した段階で「ラ・ブランシュ富山」の売却を決めました。

――そもそもなぜ、奈良から離れた富山に式場を持っていたのですか。
出口 以前、関西で買収しようとしていた物件の話が流れたタイミングで、ちょうど持ち込まれたのが富山の式場でした。父が買収を決断したのですが、その頃はまだまだブライダルは成長市場だったのであまり場所のことは重視しなくてよかったのでしょう。しかし富山も奈良と同じローカル市場なので、競合の参入があれば奈良と同じことが起こります。そう考えるとローカル市場は本社のある奈良に絞り、富山の式場は売却して東京でこれまで以上の売上をつくろう。新しいことに挑戦するほうが前に進めると考えたのです。そしてこの春にオープンしたのが東京・南青山の「THINGS Aoyama Organic Garden. dth」です。
――事業譲渡に伴い、発生した課題もあったと思います。
出口 ディライトの企業理念は「我々に関わるすべての人が幸福になり、高い人間性を有した企業集団であることを誓います」で、社員をとても大切にしています。富山の式場を売却しても「ディライトに残りたい」というスタッフを切ることは絶対にできません。もし全員が残るとしてもその受け入れ先を確保しておかなければならないので、事業譲渡と、東京に打って出て受け入れ先を確保することを同時に進める必要がありました。事業譲渡が決まらなくても、東京の式場のオープンが決まらなくても富山のスタッフを動かすことができませんから、両方のタイミングを合致させることが非常に重要でした。
――今回の事業譲渡について、山田ビジネスコンサルティングにアドバイザーを依頼したのはなぜですか。
出口 担当者の長田さんとは、以前から知人の紹介で面識がありました。他のことでご相談させていただいたりするなかで、信頼できる方との印象を持っていたので、長田さんにお願いしたいと考えました。率直に言って、今回の依頼はかなり難易度が高かったと思います。先に東京の式場のオープンが決まり、「ここまでに事業譲渡しなければいけない」という時期が決まっている一方で、価格面の要望も当然ありましたから。この2つの希望は相反するもので、交渉先から足元を見られてしまう要因にもなります。

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――最終的に山田ビジネスコンサルティングが作成した事業譲渡先リスト(ロングリスト)のなかからブライダルの一部上場企業、A社への売却を決断されました。
出口 売却を決定したのは2015年の11月末でした。決断のポイントはタイミングです。価格面は希望に届かなかったのですが、東京での営業開始を考えるともうそこしかない、というタイミングで、決定した瞬間に富山のスタッフを東京に動かし、式場のオープン準備に取り掛かりました。結果的には10人の営業スタッフが全員当社に残り、現地採用したキッチンスタッフ等の方たちは富山に留まりました。また譲渡先のトップが同じ奈良県出身で、信頼関係を構築できたことも大きかったと思います。
――まだ事業譲渡から間もないですが、当初の狙いは達成されていますか。
出口 達成されたかどうかは別として、あのときに決断して前に進み、本当に良かったと感じています。ローカル市場では厳しい戦いが続く一方、東京という大きなマーケットに出ればうまくいくという、私たちが予測していた通りの展開になっていますから。「THINGS Aoyama Organic Garden. dth」は計画の1.5倍で進捗しており、非常に順調です。また、事業譲渡や富山の式場の退店処理に携わった社員や役員たちが困難を乗り越え、大きく成長したのは思わぬ収穫でした。

――山田ビジネスコンサルティングに依頼して良かったのはどんな点でしょうか。
出口 今回の事業譲渡は難易度が高い案件だったので、ちょっとした行き違いが大きな不信感につながりかねなかったのですが、非常に密にコミュニケーションや情報共有を行ってくれたので、そうした事態が発生しませんでした。相手のあることですから、事業譲渡の交渉は自分たちの思い通りにいかない場面も少なからず発生します。それ自体、アドバイザーに対する不信感に結びつきかねませんが、それをカバーして余りあるくらいしっかりコミュニケーションをとってくれました。担当が長田さんでなかったら、どこかでブチ切れていたかもしれませんね(笑)